国高文研

国立高等学校文学研究部ホームページ

三年目の流氷

                  

三年目の流氷 ミヤマ

 

時折、底知れない寒さに襲われる。

北極海だろうか何処かで、ぐらぐらと頼りなく揺れる氷の板の上に立っているように。

つるつるとした表面に脚を攫われて、ふわりこの身は宙にあって、気が付けば暗い暗い冷たい冷たい海の中へと沈んでいく。

ごぽり。

そうして二酸化炭素の塊が口から零れ、夜の空へ昇るのを見ながら溺れるのだろう。

そんな未来像が瞼の裏にこびり付いてしまってとれない。

 

不安定さは嫌いだ。

だってどう転ぶかすらわからないのだもの。良い方へ、悪い方へ。それを決めるのは私ではない。いや、違うか。

努力したって叶わないものも得られない結果は山ほどある。

そもそも無理だったのかそれとも誰かが言うように努力が足りなかったのか。

わからないが、失敗とは総じて辛く苦しいものだ。

いや、私だからこそ願っていたものと反対の結果になったことを受け入れられないのだろう。

 

失敗を繰り返しては海に落ち、その度氷水の冷たさに身体が震える。

未来像の通り、ここは寒い。

死にたくなるほどの寒さだ。鳥肌どころか吸い込んだ水が内側から体を刺すような。

だから嫌だったのに。

氷の上でバランスを取るのは難しい。

しかし私はそれを難無くやってのけるひとを知っている。出来ない訳では無いはずなのだ。出来ない訳では。

では、何故、出来ないのだろう。

ごぽごぽと溢れる泡が水面へと向かうのを数えながら考える。

右脚からゆっくりと歩き出せば良かっただろうか。それとも左脚から。おそらくやり方から間違っていたのだろう。

あのとき、あれじゃない、こんな選択肢を選んでいれば。

このとき、こんなことをしなければ。

そのとき、こんな理想を願わなければ。

何故、頑張り続けるのだろう。 

期待通りの結果が来る訳でもないのに。

 

あ。

 

 

空が綺麗だからだ。

努力あっての結果とか、努力無しでは何も得られないとか、そういうのではない。

私はあの夜空が好きだからだ。

それだけだった。

光る星星や、黄金色の月、そんな夜の空を意外と気に入っていたらしい。

なんと簡単で単純なことだったか。

 

 

ざばあ!と水面から顔を出す。

張り付く髪をかきあげて、手を伸ばして氷にしがみつく。爪が表面を滑るし、水の染み込んだ服は重い。身体は震えて、寒くてたまらない。

「ちくしょう」

海から上がっても辛いだけだ。

これならまだ沈んでいたほうがわずかだがマジだったのかもしれない。

それでもやはり、海の外から見る空は私にはただ綺麗であった。

                 

あとがき

特に意味は無い。 それでも言うなら頑張る理由も沈む理由も這い上がる理由も人それぞれ。今ならそんなときもあるさと思える。 では、新入生の皆さんは国高で楽しい時間を見つけられますように。もし良かったら文研と美術部入ってください。 入学、おめでとう。

                  

2016年4月 MIXTURE:新入生歓迎号